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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 15ー7

 自分の都合で、複数の予兆に気がつかないふりをした。その結果で引き起こしたものの責任は、最低限取るつもりでいるが、余分な混迷の期間をつくった事実は消えないだろう。  そのあいだ、いつまで放置しておくつもりだ、と。苦言を呈し続けていたはずの男は、なぜか少し困ったふうな顔をした。 「気にしてないよ、なにも。むしろ、茅野とか向原とかが言ってたとおりだと思うし。というか、そのときも、わかってはいたし」 「いや、俺もそこを気にしたわけではないんだが。ただ、なんだ」 「なに?」 「おまえの意志で決めたことなら、結果、中途半端であったとしても、いまさら蒸し返すつもりもない。だから、必要以上に自分の責任と思わなくてもいいだろう、と思っただけだ」 「茅野が、それ言う?」  寮であったことは、ぜんぶ自分の責任だ、と公言して憚らないくせに。笑うと、なんでもない調子で茅野が応じた。 「それはそれ、というやつだ。それに、まぁ、中等部のころ、おまえがどう思っていたのかは知らないが、少なくとも、この二年は誠実に動いていただろう」  誠実。自分にはほど遠いように思える表現に、曖昧に頷く。その反応を気にしたふうでもなく、だから、と茅野は続けた。 「あまり肩に力を入れすぎるな。おまえこそ、頼れるうちに適切な相手に頼ったほうがいい」

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