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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 15ー8

 誰を想定して言っているのかは、聞くまでもないことだった。どうとでも取れる曖昧な笑みをもう一度浮かべる。どう言葉にしたところで、あまり意味を成しそうになかったからだ。 「こういうことも、時機を逃すとできなくなるぞ」  しかたないと話を切り上げる調子だったので、成瀬も当たり障りなく「そうだな」と応じた。  ついでだから、一年生のフロアを覗いてくるというのを見送って、ようやく部屋に入る。扉を閉めたところで、成瀬は小さく息を吐いた。  ――でも、結局、拒絶し切ってもくれないんだよな。  切り捨てるようなことを言って、実際に話をすることもなくなっても、こちらが能動的に示してなにかを拒絶することまではしない。  人のことを甘いだなんだと好き勝手に言うけれど、成瀬からすれば、向原のそういう部分のほうがよほど甘いと思う。  一番呆れているのは、その受け入れてくれる甘さに、どこかでほっとした自分自身ではあるが。 「……だから、面倒なんだよ」  表面上だけでは済まない人間関係を築くことも、気にかけられることも、与えられることも。

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