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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー4

 ――でも、気づかないふりしてくれてたんだよな、ずっと。  仲が良いわけでも、なんでもなかったのに。そのおかげで、自分は何者でもない「ベータ」で長くい続けることができた。  そうして、今も。気遣われることが鬱陶しいと思うことができていることも、ある意味で、高藤のことを信用しているからだ。  自分のことをオメガだと承知していても、意に反することはしないと思っているから、だから、そんなふうに、のんきに怒ることができる。  ――そういうやつなんだよな。  アルファだから、とか。そういったこと以前に、人間的に信用のできるやつ。自分がわざわざ言わなくても、知っているやつは知っていると思うけれど。  ――そもそも、昔から、アルファの中でも目立つ部類のくせに、ぜんぜん偉ぶらないもんな、あいつ。  たぶん、だけど。わりと平和主義者で、それで、目立つことも、そこまで好きではない。それなのに、今回、目立つことを引き受けてくれた。  それで、それは、自惚れではなく、半分以上はきっと自分のためなのだ。申し訳ないと思ったし、正直なところ、少し困るとも思った。でも、今は、その気持ちに気持ちを返したいと思っている。  今していることも、そのひとつのつもりだった。

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