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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー5
たいしたことではないとわかっているけれど、自分にできることをすこしでもいいから返したい。
そんなふうに思うことは、ほとんどはじめてだったかもしれない。
――前に、向原さんが言ってたんだ。
つらつらと書き記しているうちに、ふっと少し前にこの部屋で話したとき、高藤が最後に言っていたことを行人は思い出した。
なんで選挙に立候補することにしたのか、という話をしていたときのこと。
目立つことは好きではないし、お世話になった二年の先輩のことも気にはなるけれど、と笑って、そう言っていた。
「なんで、成瀬さんは会長なんてやってるんだろうなって、俺が聞いたとき」
なんて、ときたか。と行人は思ってしまったのだが、高藤は妙にすっきりと楽しそうだった。
「最初、いいとこ復讐じゃないかって返されてさ。想像できすぎて、ちょっと笑いそうになっちゃったんだけど。向原さん、そのあと、ちゃんと、今はそうじゃないと思うけどなって言ってて」
そうだろうなって俺も思ったんだよ、と続いた台詞に、曖昧に頷く。
復讐という言葉のインパクトで頭がいっぱいになっていて、それが精いっぱいの反応だったのだ。
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