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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー7

 まだまだ足りていない部分もあると知っている。でも、自分たちは自分たちらしく少しずつ進んで行けばいい。  なにもかもすべてを真似する必要もないし、逆になにもかもすべてを捨てる必要もない。  だから、俺も、俺の意志で、高藤をサポートする。成瀬さんに言われたから、とかじゃなくて、……友達として。  そういうことがしっかり伝わっていてほしいし、よく見ていて、大切にしている、というふうに、思ってもらうことができたらいい。  そう、思った。 ** 「書いてみないって言ったのは俺だけど、いやぁ……」 「いやぁ、なんだよ?」  まさか本当に書いてくるとは思っていなかった、とでも言いたいのだろうか。行人の渡した用紙に目を通した荻原は、あまり見たことのな類の、なんとも言い難い苦笑いを浮かべている。 「いや、……その、うん。書いてくれてありがとうね、榛名ちゃん。すごく参考になった」 「思ってないだろ、絶対」 「思ってる、思ってる。でも、そうだな。俺ひとりしか読まないのは申し訳ない出来だから、原本、高藤にあげていい?」 「やめろ」 「泣いて喜ぶと思うんだけど」 「絶対、やめろ」  冗談抜きで、それは絶対にやめてほしい。これだって人の多い談話室で見せるのは恥ずかしかったから、時間外の食堂に引っ張ってきたというのに。

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