981 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー8

 猛然と否定した行人に、しげしげと改めて紙面に目を通しながら、「そうかなぁ」と荻原が言う。 「ちょっと、なんか、むず痒い感じはするけど、こう、熱烈に応援してる感じが伝わってきて、良い出来だと思うよ?」 「むず痒い」 「うん、まぁ」 「熱烈に応援してる」 「え、でも、してるでしょ?」  いや、それは、応援はしているけれど。なんだかどうにも居た堪れなくなって、行人は肩を落とした。 「こういうのって、夜中のテンションで書くものじゃないな……」 「あ、うん。それはそうだと思うよ。夜中に書いたラブレターとか、絶対地雷だもんね」 「ラブレター?」 「あ……、いや、うん。間違えた。応援演説だったね。ごめん」  本当に間違ったのだろうか。疑念を覚えたが、行人は問い質すことはしなかった。うん、と曖昧に相槌を打つ。 「とにかく、ありがとうね。榛名ちゃん。応援演説の参考にさせてもらうよ」  荻原もそれ以上のことは突っ込まないことにしたらしい。笑顔のまま用紙を折りたたむ。受け取ってもらえたことにほっとして、行人はもう一度、うん、と頷いた。  にこ、と人当たり良く応じた荻原が、そういえばさ、と再び口火を切った。 「榛名ちゃん、よっちゃん、どう?」

ともだちにシェアしよう!