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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー9

「え……、あ」 「榛名ちゃんも知ってると思うけどさ、高藤にもツンツンだったんでしょ? 俺には無理って匙投げられちゃって」  今まで散々優しくされてたのに、ひどいよねぇ、と続いたそれに、行人はどうにか頷いた。  なんだか、ちょっと、据わりが悪い。忘れていたわけではない。荻原に、「気にかけてあげてね」と言われたことも覚えていたつもりだし、高藤にらしくない態度を取ったときも、大丈夫かなとは思った。  今、談話室の作業に四谷が顔を出さないことも不思議に思ってはいる。けれど、生徒会が忙しい、だとか、高藤のこともあって自分が口出しにくい、とか、いろいろな理由を盾に、思う以上のことをなにひとつ自分はしていなかった。 「えっと……、その」  罪悪感を薄めるように、行人は取り繕ことのできる言葉を探した。 「そのときも、岡が追いかけてくれてたし、俺だと、その、変に刺激するかなと思って様子見てたんだけど」 「あぁ、岡ね」  得心したふうに荻原が相槌を打つ。 「まぁ、あのふたりも中等部のころからずっと仲良いけどさ。よっちゃん、結局はっきりとしたことは言わなかったらしいよ」 「あ、……そうなんだ」 「あんまり問い詰めるのもって言ってたし、俺もそれはそうだと思ったんだけどさ」

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