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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー11

 罪悪感がおさまらなくて、行人は四谷と親しい人間を探した。中等部にいたころから四谷とずっと仲が良いのは、岡と朝比奈だ。 「朝比奈」 「なに?」  そっと声をかけると、嫌がるふうでもなく朝比奈が振り返った。四谷と似たタイプの小柄でかわいらしいベータだ。  もともとの自分の交友関係ではまったくないが、四谷と話す機会が増える中で、行人も喋ることが増えた。友達とまでは言えないものの、同じ寮の同級生として、以前よりは付き合えているつもりである。 「えっと、その、四谷なんだけど」 「部屋にいると思うけど」  これには参加しないって言ってたし、とあっさりと朝比奈が言う。行人が言い淀んだことが伝わったのか、困ったふうに苦笑を返されてしまった。 「だって、こんなこと、榛名に言うのもなんだと思うけど、あの子の気持ち考えたら、参加しなくてもしかたなくない?」 「……」 「あ、いや、責めてるわけじゃないけど。その、気持ちを汲んであげてってこと」 「…………」 「えっと、説得したかったらしたらいいと思うけど。うまくいくとは限らないんじゃないかなぁ。それに、今まで榛名なにも言わなかったでしょ。それなのに、いまさら言っても」  最近ピリピリしてるし、と、また少し困った顔で笑われてしまって、そっか、と小さく呟く。  ――また、自分のことしか考えてなかったな、俺。

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