984 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー11
罪悪感がおさまらなくて、行人は四谷と親しい人間を探した。中等部にいたころから四谷とずっと仲が良いのは、岡と朝比奈だ。
「朝比奈」
「なに?」
そっと声をかけると、嫌がるふうでもなく朝比奈が振り返った。四谷と似たタイプの小柄でかわいらしいベータだ。
もともとの自分の交友関係ではまったくないが、四谷と話す機会が増える中で、行人も喋ることが増えた。友達とまでは言えないものの、同じ寮の同級生として、以前よりは付き合えているつもりである。
「えっと、その、四谷なんだけど」
「部屋にいると思うけど」
これには参加しないって言ってたし、とあっさりと朝比奈が言う。行人が言い淀んだことが伝わったのか、困ったふうに苦笑を返されてしまった。
「だって、こんなこと、榛名に言うのもなんだと思うけど、あの子の気持ち考えたら、参加しなくてもしかたなくない?」
「……」
「あ、いや、責めてるわけじゃないけど。その、気持ちを汲んであげてってこと」
「…………」
「えっと、説得したかったらしたらいいと思うけど。うまくいくとは限らないんじゃないかなぁ。それに、今まで榛名なにも言わなかったでしょ。それなのに、いまさら言っても」
最近ピリピリしてるし、と、また少し困った顔で笑われてしまって、そっか、と小さく呟く。
――また、自分のことしか考えてなかったな、俺。
ともだちにシェアしよう!

