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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 16ー14

 ――そうだよな。  うん、と自分を鼓舞するように、行人は頷いた。 「断られてもいいから、一回だけ声かけてみようかな」 「そうする?」 「あ、……でも、朝比奈にも言われたんだけど、たぶん断られると思うから」  あまり過度な期待はしないでほしい、と匂わせた言外に、大丈夫だよ、と荻原が請け負う。 「そんなこと言ったら、俺、何回も振られてるし。それに、たぶん、変にゴリ押しさえしなかったら、断られるにしても、そっけなく振られるくらいで済むと思うよ」  それはそれで、あまりにも期待されていないというか、断られることが大前提になりすぎているような。  一緒に行こうか、という申し出は断って、行人はこっそりと談話室を抜け出した。  最近は、寮の一年生の半分くらいはなんだかんだと談話室にいるし、たまに顔を出すだけの人間を含めれば、三分の二くらいは作業に参加している。  もちろん、するしないは自由だけれど、参加していない人間は「あぁ、だろうなぁ」と納得するタイプばかりで、そういう意味で、四谷の不参加はたしかに少し目立っている。  ――本当、いまさら言うなって話なんだろうし、朝比奈からしたら、「察しなよ」な理由なんだろうけど。  でも、自分は、その察するべきほうの理由を、いまさらな感じがして、ちょっと腑に落ちないと思ってしまっている。  それも、傲慢というやつなのだろうか。ここまで来て悶々と悩みながら、行人は目的のドアを叩いた。

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