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パーフェクト・ワールド・エンド2-10
「でも、そこを超えるなら、俺も今までのスタンスを崩さないといけないかもしれない」
「……おまえが?」
「そう、俺が」
成瀬会長と同じ、平和主義者。その仮面を取り払って、微笑む。まぁ、でも、と思う。
榛名はあの人のことを盲目的に良い人だって信じてたみたいだけど。皓太から言わせれば、平和主義者だろうことは否定しない。けれど、それはあの人が求める状態を維持できていたから、「そう」だっただけだ。篠原や向原と言った生徒会のメンバーは軽口の調子で良く口にしていた。
あいつは暴君だ、と。
そちらの方が、よほど的を得ていると皓太は思う。自分が気に入っている人間を守るために、創り上げられた楽園。皓太自身が、その中で安穏としていた人間の一人ではあるけれど。
だからこそ、それが崩れると言うのなら、止めなければいけない。榛名が今まで無事に過ごせて来ていたのは、その楽園の檻の内側にいたからだ。
「仕方ないよ」
応戦しようとしたアルファの腕を、色めいた仕草で水城がからめとる。柔らかな瞳が、ゆっくりと自身に向けられる。似ていないな、と思った。榛名とは、似ても似つかない。
「大事なものは、人それぞれだから」
それを守るためなら、何をしても仕方がないよね、と言うように。その唇が微笑んだ。
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