995 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー5
「でも、まぁ、なんだ。良い機会だと思わないとしょうがないだろ。逃げるのやめて関わるようになったからこそ、揉めてるわけで。だったら、そのうち、嫌でも成長していくだろ。今なら皓太がいるから、完全にひとりになるわけでもなし」
良い機会だろ、と篠原が繰り返す。反論をするつもりもなかったので、そうだな、と成瀬もまた同じ相槌を選んで繰り返した。
わかっているつもりだ。その人生を最後まで見てやることができないのなら、過剰に庇護下に置いて成長の種を奪ってやるべきではない。
そのはずだったのに、うまく一線を引いてやることができなかった。けれど、幸いなことに、あの子の近くには、篠原が言うように皓太がいる。
たぶん、この不条理な世界で、唯一と言っていいほどに、自分が信頼しているアルファ。
「大丈夫」
もう誰もいない窓の外を見やって、ひとりごちる調子で成瀬は呟いた。
「わかってるから」
オメガはひとりでは生きられない、なんてことはないと思う。そう行人に言ったとおりで、その考えは今も変わっていない。
ひとりで生きていくことは、可能だ。そうできるように努めて、生きてきたからだ。
ともだちにシェアしよう!

