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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー6
――でも、信頼できるアルファがいるなら。ずっと一緒にいたいって行人が思えるアルファがいるなら。つがいになったほうが、きっとずっと生きやすい。
――幸せになれる。
――逃げたわけでも、負けたわけでもない。運命だったって、だけだ。
諭すように、そうも自分は言った。それも、嘘ではなかったつもりだ。信頼できるアルファがいるなら。好きなアルファがいるのなら、つがいになればいい。
そうやって、愛し愛されて、幸せになってほしい。自分にはできないことだけれど、行人は、はじめて大切に思うことができたオメガだったから。
なにもできない代わりに、せめて、と。どこか祈るような気持ちだった。
自分がそんな感情を持つことができるなんて思ってもいなかったのに、いつのまにか、そんなふうになっていた。
自分には取ることのできない選択を選ぶことのできる相手を羨もうと思ったことはないつもりだ。
けれど、もしかすると、自分はどこかで、自分には選ぶことのできない未来を、勝手に重ねて願っていたのかもしれない。
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