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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー7

 立会演説会が終わったあとの講堂は、ひどく静かだった。二階のギャラリーから無人のステージを見下ろしたまま、成瀬はふっと静かな笑みを浮かべた。  ――余計な手を出す必要なんて、最初からなかったのかもな。  手伝ってほしいと言われたということもあったし、教えてやることは残っていると思ったから、この二ヶ月、いろいろと手も口も出してきたけれど。  そんなことをしなくても、皓太であれば、なにも問題はなかったのかもしれない。 「よかったな」 「茅野」  さすがに学内で気配を察知し損ねるほど、気を抜いてはいない。隣に並ぶことを迎え入れるように、視線を向けてほほえむ。 「無事に終わったことはよかったと思ってるけど、まだ結果は出てないだろ」 「まぁ、それはそうだが」  出たようなものだろう、といった調子に、成瀬は笑った。たしかに、講堂にそういった空気は流れていた。そうして、なによりも、皓太自身が納得した顔をしていた。  無理を強いた自覚があっただけに、その事実にほっと安堵はしていた。大きくなったな、とも思った。 「ちょっと話、変わるんだけど」 「なんだ?」 「茅野、一年の子に余計なこと言った?」

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