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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー8

「余計なことを言ったつもりはいっさいないが」 「本当に?」  そう念を押せば、茅野が苦笑をこぼした。 「寮長としても、それ以上に、寮生委員会の会長としても、認めがたいことではあるが、最近はどうも物騒なことがあるからな」  なにがなんでも黙っておく、というほどのつもりもなかったのだろう。想定どおりの前置きに、成瀬も苦笑を返した。  まったくもってそのとおりで、そうして、そうさせた原因の半分はくらいは自分にあると承知している。 「だから、まぁ、できる限り、寮生で固まって行き来しろ、と言ったは言ったな」 「それだけ?」 「それだけだ。個人の交友関係にまで口を挟むつもりは、俺にはないからな。その忠告も、朝夕の寮と校舎の行き来だけを指したつもりだったんだが。必要以上の気遣いをした寮生がいたかもしれない」  そうなるだろうと読んでいたくせに、よく言うよ。自分に言えるわけもない糾弾を呑み込んで、そっか、と頷く。 「まぁ、集団で動いてるほうが安全なことは事実だよな」  事実、似たようなことは自分も行人に言っている。ひとりで対処できることばかりだとは限らないからだ。

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