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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー10

 つまるところ、なにかしら引っかかるものがあるらしい。それにしても、と。出てきた名前が気になって、成瀬は問いかけた。 「向原? 珍しいな、一年の子と関わるの」 「なんだ、聞いていなかったのか。本人いわく、たまたまそういうタイミングだった、というだけのことらしいが。絡まれているところを助けてやったらしいぞ。四谷本人が言っていたし、あいつも否定はしなかったから、そうなんだろう」 「へぇ、向原が」 「まぁ、向原が口を出したらしいことも意外は意外だったんだが。四谷がそういう迂闊なことをしていたほうが意外でな」  迂闊。判断をつけかねて、小さく頷くに留める。自分よりも確実に茅野のほうが理解しているはずなので、間違いはないのだろうが。  ――そういう迂闊なことをしない子だから、近くで行人に学ばせたかったわけか。  行人、警戒心だけは強いけど、自分を守るために対人関係を動かすの苦手そうだからな。  そういうところが、かわいくはあるのだが。その納得を裏付けるような補足が続く。 「そういうタイプじゃないんだ。語弊はあるかもしれんが、どちらかというと、おまえや水城に近い、自分の容姿を自覚して、警戒心が強くて気も回る。頭も良い。この荒れているタイミングで、迂闊な行動をするとは思えない」

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