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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー12

 ――人の心なんて、わからないよな。たぶん、誰にも。  思いやろうとしたところで、結局、それは、自分の価値感の延長線上のものでしかない。 「ここまで言っておいてなんだが、おまえはあまり気にするな」  その言いように、茅野を窺った。フォローのつもりなら、余計な世話だと思ったからだ。 「ようやく少しは肩の荷が下りたところだろう」 「……俺がなにしたわけでもないけど」  予想外に労わられてしまって、苦笑まじりに否定を返す。 「というか、いろいろしたつもりだったけど、今日の皓太見てたら、べつに本当に必要なかったなって。本当に、あっというまに大きくなるな」 「だから、子ども扱いしすぎるなと言っただろう」 「言ってたな」  茅野からだけではなく、至るところから言われていたことではあったのだけれど。  わかっていたのに改めなかったのは、面倒を見る自分でいたかったのかもしれない。そういう意味でも、「誰かに認めらないと、自分の価値を認められないのか」という向原の指摘は、的を得ていた。  本当に、嫌になるほど。

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