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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー15

 ――狭めてやるな、か。  ひとりに戻った空間で、成瀬は隠すことなく溜息を吐いた。本当に、他人事だと思って、好き勝手ばかり言ってくれる。  どいつもこいつも、と。八つ当たり気味に浮かんだ思考は、けれど、どうにか押し止めた。  そんなふうにさせているのは、自分に原因があると思い直したからだ。認めたくは、なかったけれど。  同時に、でも、とも思う。認めたくはないし、腹は立つが、そういった感情を抜きにすれば、指摘としては概ね正しいのだ。  アルファではない自分に意味などないと思っていたことは、事実だ。そうして、実際に「そう」だった。少なくとも、この学園に入るまで。あの家にいたあいだは。  けれど、それ以降は本当に、そうだったのだろうか。ここに来てからの五年という月日は。  自分はなにも変わっていないのだろうか。  ――きみがそこで変わればいいと思っていた。  ――実際、きみは変わっただろう。アルファの子たちと触れ合う中で、ただの憎むべき対象ではなくなっていったはずだ。  ――それは、きみのなかで向き合った「個」になったからだと思うけどね、僕は。  ――いいことだと思うよ。だって。  知ったふうに見透かした声が頭の中で響く。  ――きみはいいかげん、自分の足で踏み出さないといけないだろう。

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