1008 / 1072

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー18

「もういいの? 中。……って、向原もべつに好きじゃないか。ああいうにぎやかなとこ」 「おまえもだろ」  あいかわらずの淡々とした、けれど、不思議と突き放したふうでもない、馴染んだ調子だった。あの夜に聞いたものと同じ。 「そうだけど。でも、また戻るよ、さすがに。向原は?」  顔を出したことで最低限の義理は果たしているわけで、部屋に戻ったところで誰もなにも言わないだろう。そう問いかけると、向原がかすかに笑った。 「戻ると思ってたのか」 「どうかな。話す気があったら来ると思ったけど、なかったら来ないかなとは思ってた」  事実だった。ひとりでいるところに向原がふらりとやってくることがあるのは昔からで、自分はそれを拒まなかった。  本当にひとりになりたかったのなら、場所を変えればいいだけだったとわかっている。そうしなかったのは、嫌ではなかったからだ。 「だって、それ以外で向原がここに来る理由ないだろ」 「……」 「まぁ、それは俺もだけど」  わかりやすいいつもの場所を選んだ時点で、そういうことでしかなかった。 「とりあえず、選挙のことはお礼言わないとなぁと思ってたし」

ともだちにシェアしよう!