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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー19
「……まぁ、そういう約束だったからな」
「そういうとこ律義だよな、向原は」
それも、本当に、昔からではあるけれど。もう何年も、ほとんど無意味と言っていい茶番に付き合わせている自覚も、さすがに一応は持っている。
「でも、ありがと。あと、まぁ、よかったなって。いくら大丈夫だと思ってても、結果が確定するまでは落ち着かないから」
「落ち着かないもなにも」
この一、二ヶ月を思い返しでもしたのか、今度のそれは少し呆れたふうだった。
「怖いなんて思わないだろ、おまえ」
「あるよ」
行人みたいなことを言うなぁ、と。バレたら気を悪くしそうなことを考えたまま、成瀬は繰り返した。
「いくらでもある」
向原には、きっとないのだろう。そういう男だ。飾りではない自信があって、それに見合った本物の力を持っている。けれど、自分はそうではない。肩肘を張って、直視することを避けていただけで、本当はいくらでもあった。
この爆弾を抱えている限り、それがゼロになることはない。
「たとえば?」
問いかけてくる声は静かだった。
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