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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー21

「自分で自分がコントロールできなかったことが。アルファでいるための前提がぐずぐずに崩れたみたいで」  それが、自分にとって、どうしても許せないことだった。自嘲するように笑って、足元にそっと視線を落とす。 「俺は、アルファでいないとなんの意味もないのに。アルファでいるために、ここを選んだのに。それに……」  ――あなたはいつまでアルファのまねごとをしているつもりなの?  それを強いたのはあんただろう、という台詞を叩きつけることはできなかった。わかっていたからだ。あの人は、なにひとつ強要はしていない。すべて自分が決めて、それに対してのサポートを買って出ただけ。  幼かった自分が、必要とされたくて、期待に応えようとしただけ。あの人なら、そう言うだろうとわかっていた。  脈絡もなにもない話を聞かされて呆れているのか、向原はなにも言わなかった。小さく息を吐いて、顔を上げる。 「おまえに聞いてもなんの意味もないってわかってるけど、聞いていい?」  言えるわけがない「それに」の続きを呑み込んで、問いかける。 「俺、アルファに見える?」

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