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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17ー22
なんで寄りにもよって、自分を一発でオメガだと見破った、アルファの男に聞いているのだろう。自分でも、わからなかった。
わからないことばかりが、馬鹿みたいに増えていく。そんな自分が嫌で、必死に取り繕っていたはずだったのに。
いやに長いように感じられた沈黙のあとで、向原が口を開いた。
「見えるもなにも、おまえはおまえだろうが」
それ以外になにがあるのかと心底呆れていることがわかる、明瞭な返事だった。あまりのあっけなさに、どうしようもなくて、苦笑がこぼれる。
この、向原の公平さも、ある種での潔癖さも、持って生まれた強いアルファ性ゆえのものだと、ずっと思っていた。今もそう思っている。そういう地盤があるからこそ、持ち得るものなのだと。でも。
――向原にとって、そうであることは事実なんだよな。
アルファだなんだと自分が色眼鏡で見続けていたというだけで、向原にとっては、そうなのだ。
――頭から決めつけてやるな、か。
それも本当に、幾度となく言われていたことで、けれど、ずっと認めることができなかったもの。ふっと成瀬は笑った。
「……そっか」
「そうだろ。なんでもかんでもややこしく考えすぎなんだよ、おまえは、昔から」
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