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パーフェクト・ワールド・エンド3-2
「おまえは、あいつに手ぇ出すなよ」
「へぇ」
本尾が薄っすらと笑った。酷薄な笑みだ。
「出したら、どうするって?」
「どうして欲しいんだ?」
ふっと、向原も笑った。そして宣言する。
「おまえが望むようなことは、何もしてやらない」
この男が、自身に求めていることを向原は知っている。けれど、その一切を放棄している。
何を特別に思うかだなんて、本当に人それぞれだ。
「俺は、この学園に何の思い入れもない」
だから、好きにすればいい。本心をそのままに告げて、背を向ける。
「最初に取り決めた通りだ。俺の邪魔をしないうちは好きにしろよ」
風紀委員会がどう動こうが、自分が抜けた後の生徒会がどう動こうが、茅野が寮生委員会をどう使おうが。
出る結果に大きな違いはない。
一夜明けて、この学園に流れる空気は変わった。けれど、それもあるべき方向に流れ始めているだけだ。今のところ、止める気はない。
生徒会室でさぼれなくなったことだけは、多少の痛手かもしれない。今回の変化で向原が被った実害はその程度だ。あいつらとは違う。
屋上からは、四つの寮すべてが見える。櫻に、柊、楓に葵。風紀委員の多くが在籍する柊と水城の在籍する楓。この二つが手を取ることは想像に易い。茅野は残る葵と結託するだろうが、葵寮にはあまり目立つ人材はいない。
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