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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 0-11

「そっか」  納得半分という顔で頷いてみせてから、ゆっくりと水城は切り出した。以前にこの教室で相対したときと同じ、自分が他人に見られていることを存分に意識した、芝居がかった仕草で。 「僕はそうは思わないけど、でも、つまり、高藤くんはそう思っているっていうことで、これから先は、高藤くんが、会長たちと同じことをしていくってことでいいのかな」  その瞳を見返して、皓太ははっきりと答えた。水城だけでなく、この場にいる人間に聞こえるように。改めて宣言するつもりもあった。 「そのつもり。俺は今のここが好きだから」 「そっか」  同じ調子で相槌を打って、水城がほほえむ。 「やっぱり、変わらないんだね。すごく残念。僕、高藤くんとは仲良くしたいって今も本当に思ってるんだけど。でも、しょうがないよね」  口ぶりだけは残念そうだったものの、声音はどこか楽しそうにも聞こえた。そうだね、となんでもない返答を皓太も選んだ。  思想が違うことは、あたりまえのことだ。それを他人に強要さえしなければ、誰かに害を成しさえしなければ、なにも責められることではない。もう一度、水城がほほえんだ。 「じゃあ、これからは、僕が僕を主張する相手は、きみになったっていうことでよかったのかな」  よろしくね、と無邪気とも取れる表情のまま、右手を差し出す。握手を求めた状態で、にこりと水城が笑う。 「わかってもらえないのは寂しいから。僕、わかってもらうために、一生懸命がんばるね」

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