1026 / 1072
パーフェクト・ワールド・ゼロⅤ①
[卒業編]
恋愛って、笑える。
自分がうまくやるために、相手が勝手に抱く好意を利用することは、水城の常とう手段だ。
ある程度の好意が離れていかないように、適当に愛想も振るし、ある程度以上の相手なら、きちんとご褒美も与えて、それなりに良好な関係を築くこともある。
そうすることが、自分にとって「いいこと」だからだ。
だから、なんの変哲もない、――本来だったら、興味を持って話しかけるような相手ではないベータに、自分の大事な時間を割いているのだ。
その事実をもっとありがたく感じてくれたらいいのになぁ、なんて。とりとめもないことを考えながら、話の最後に、水城はもう一度ほほえんだ。
「それって、脅してるつもり?」
「まさか」
精いっぱいというふうの虚勢を、さらりと笑い飛ばす。そもそも、脅すなどという低俗な真似なことをしたことは、一度もないつもりだ。
自分はいつもお願いをしているだけ。今日、彼を裏庭に呼び出したこともそうだ。本当に脅すつもりだったら、もっとわかりやすく何人も取り巻きを連れてきている。それだけの駒を自分は持っているのだから。
「絶対に僕はそんなことはしないけど、もし、そんなことをするつもりがあったら、ひとりでなんてやってこないよ」
そう思わない、と笑って問いかける。警戒心をあらわにする瞳をじっと見つめたまま。
「ねぇ、四谷くん」
ともだちにシェアしよう!