1030 / 1072
パーフェクト・ワールド・ゼロⅤ⑤
その自信があったからこそ、自分はすべてをわかっているという顔で与えられた「親切な忠告」には、本当に神経を逆なでられた。
でも、それも、あともう少しの辛抱だ。そう言い聞かせて、改めてにこりとした笑みを刻む。
「じゃあ、なんでなにも言わないんだろうって不思議だったんだけど――、そっか。そうだよね」
納得したという顔で頷いて、ここぞと水城は言い募った。育ちの良いいい子のアルファには、信じられないという軽蔑のまなざしを向けられてしまったけれど、他人の痛い部分を突くことが、どうしたって自分は好きだ。やめるつもりはない。
「気にかけてるかわいい後輩じゃないから、どうでもいいのかな」
「……て」
「榛名くんだったから、しっかりと動いてあげただけだったのかな」
かわいがっている後輩で、アルファにとって有用なオメガだったから。小さな声は聞こえなかったふりで、憐れみを含んだ笑顔をつくる。
「かわいそう。四谷くん」
アルファに憧れて、そのアルファに選ばれる可能性の高いオメガを羨んで、一番になれない。それなりにはかわいいという自覚があるから、よけいにプライドが痛むというわけだ。
だから、あのときも、黙って見てたんだよね。それで、誰にも言わなかったんだよね。そう思ったものの、言葉にしなかったことが、最後の情けというやつだ。
ともだちにシェアしよう!