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パーフェクト・ワールド・ゼロⅤ⑤

 その自信があったからこそ、自分はすべてをわかっているという顔で与えられた「親切な忠告」には、本当に神経を逆なでられた。  でも、それも、あともう少しの辛抱だ。そう言い聞かせて、改めてにこりとした笑みを刻む。 「じゃあ、なんでなにも言わないんだろうって不思議だったんだけど――、そっか。そうだよね」  納得したという顔で頷いて、ここぞと水城は言い募った。育ちの良いいい子のアルファには、信じられないという軽蔑のまなざしを向けられてしまったけれど、他人の痛い部分を突くことが、どうしたって自分は好きだ。やめるつもりはない。 「気にかけてるかわいい後輩じゃないから、どうでもいいのかな」 「……て」 「榛名くんだったから、しっかりと動いてあげただけだったのかな」  かわいがっている後輩で、アルファにとって有用なオメガだったから。小さな声は聞こえなかったふりで、憐れみを含んだ笑顔をつくる。 「かわいそう。四谷くん」  アルファに憧れて、そのアルファに選ばれる可能性の高いオメガを羨んで、一番になれない。それなりにはかわいいという自覚があるから、よけいにプライドが痛むというわけだ。  だから、あのときも、黙って見てたんだよね。それで、誰にも言わなかったんだよね。そう思ったものの、言葉にしなかったことが、最後の情けというやつだ。

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