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パーフェクト・ワールド・ゼロⅤ⑦

「よかった」  ようやく返ってきたまともな反応に、ほっと破顔する。 「そうだよね、でも、よかった。僕たち、仲良しだもんね。だからね、四谷くん。これからも、櫻寮のみんなのこと、いっぱいいっぱい僕に教えてね」  僕、四谷くんのお話聞くの、大好きなんだぁ。硬い表情の相手ににこにこと感謝を伝えて、最後にひとつこそりと水城は耳打ちをした。  内緒話を好み、秘密を共有することを無邪気に楽しむ、幼い子どものように。 「秘密の友達って、なんだかすごくわくわくするね」  恋愛って、笑える。好きな人に好かれたい。嫌われたくない。好きな人に好かれているあの子が憎い。  そんな感情で、簡単に暴走してくれる。わかりやすい弱みをたくさんたくさん落としてくれる。  好きになってほしい、なんて。他者に決定権を委ねる格下の存在に成り下がった時点で。負け犬になるに決まっているのに。  弱者は、そんなことにも気づかない。  好きにならせて、支配権を握らないことには、なにも意味はないのに。自分がそうやって生きてきたことが、この道が正しいというなによりの証明だ。  紙のような白い顔を見つめて、水城はもう一度にこりとほほえんだ。

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