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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 1-3

「じゃあな。また放課後」 「あ、……うん」  放課後、来るんだ、とは言わないまま、じゃあ、と出て行く背中を見送る。なんだか、ものすごく苛々としているような。所在なく溜息を吐いてから、皓太はやりとりのあいだじゅう一言も口を挟んでくれなかった薄情なクラスメイトに助けを求めた。 「なに、あれ」 「えぇ、なに、あれって言われても。ちょっと、高藤が冷たかったんじゃない?」  榛名ちゃんもかわいそうに、とあいかわらずの榛名贔屓のことを言われて、顔をしかめる。  寮生委員会に所属している荻原だが、たまにこうして様子見がてら、手伝ってくれていて、正直なところ大変助かっているのだが、それはそれだ。 「じゃあ、なに。クラスにいづらいの? もしかしていじめられてる? とか聞けばよかったわけ、俺が」 「いやぁ。それはそれで火に油だったと思うけど」 「やっぱり」  そうなるだけじゃん、と投げやりに手にしていたペンを回す。そもそも「いじめられている」わけではないことは知っていた。  あれは、どちらかと言わなくても、榛名がひとりでぐるぐると気にして、声をかけることができなくなっているだけなのだ。 「いや、だから、言い方っていうものがね。あると思うんだよね、俺。まぁ、俺も失敗続きだから、あんまり強く言えないんだけど」 「……」 「でも、岡もけっこう榛名ちゃんのこと気にしてたからなぁ。よっちゃんも謝りたそうにしてるんだけど、榛名ちゃんがすごい勢いで逃げるんだってさ。どうしたらいいって相談されたんだけど。どうしたらいいんだろうねぇ」

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