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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 1-5

 ――ただ、これ、あいつが新しく好きな人間ができたとか言い出したら、話も変わってくるんだよな。……たぶん。  ちら、と改めて荻原に目を向ける。昔は「軽い」、「しつこい」だの言って嫌がっていたくせに、最近は少し心を許していることが傍目にもよく見て取れていた。  行動をともにする時間が増えて、表面的でない部分を知ったからなのだろう。なんというか、わかりやすいよな、と思う。  いわゆる威圧的でない優しげなタイプが好きで、いかにもアルファといった硬質なタイプには距離を取る。それが榛名のスタンダードだ。  だから、優しいかどうかはさておいて、親しげな雰囲気をつくり出すことがうまい成瀬や茅野に素直に安心を覚えて懐くし、アルファという圧を隠さない向原や本尾といった上級生を、ある意味で正しく怖がる。  いや、でも、その理論で言えば、もう少しくらい俺に懐いてもよくないか? と思いかけたところで、皓太ははたと我に返った。なんだか、思考が妙な方向に流れかけていた気がする。 「でも、まぁ、榛名ちゃんのことは、高藤がもうちょっとちゃんと聞いてあげたらいいと思うんだけどさ」 「いや、聞いたと思うんだけど」 「だから、ちゃんとだってば。ちゃんと。意地張りやすい子だってわかってるんだから、うまく誘導してあげたらいいじゃん。そうやって高藤まで意地張ってると、またおいしいとこ会長に持っていかれるよ……って、もう会長じゃないんだったな、あの人。成瀬先輩か。言い慣れないな」

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