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パーフェクト・ワールド・エンド3-7

「つまり、あいつはアルファなんだよ。この世界では」 「話を逸らすな、と言いたいところだが。つまり、あいつは俺たちと同じだと。そう納得しておけ、と言う解釈で良いか」 「納得も何も、そうだってだけだ」 「相変わらず」  呆れた風に、茅野が笑う。 「甘いな、おまえは。成瀬にだけ」  それは、何度も言われた言葉だった。茅野に。あるいは、篠原に。 「そこは少し、安心した」  それ以上を問う気はないとばかりの沈黙が生まれる。仕方なしに向原は視線を向けた。視線に気が付いた茅野が小さく肩を竦めた。 「こう見えても、俺はおまえのことも信用している。おまえが俺をどう思っているのかは知らんが」 「いや」  どうでも良くなって、おざなりに応じる。 「おまえの出方は分かりやすいから、嫌いじゃない」 「何とでも言え。俺は自分に一番被害が少ないように動いているだけだ。寮長で、おまけに寮生委員会のトップだなんて立ち位置ではな。現状維持が一番、楽なんだ。それだけだ」  良く言う、とも思ったが、口にはしなかった。

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