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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 1-9
「……」
いや、まぁ、成瀬さんもああ見えて、べつに気が長いわけでもないしな。そう言い聞かせて、嫌な方向に逸れていきそうな思考に蓋をする。
だから、その成瀬と馬が合っている時点でそういうことなのだろう。気が長いわけではない云々も榛名は認めないだろうが、事実である。
榛名、と同室者に連想が飛んだところで、皓太はもう一度溜息を呑み込んだ。
昼休みの捨て台詞のとおり、放課後も生徒会室に顔を出していたものの、やっぱりどう見ても苛々としていたし――べつにいいのだけれど、感情を自制するだとか、誤魔化すだとかが、致命的に下手だと思う――、これは自分が部屋に戻ったタイミングで取り成さないといけないのだろうか。
――荻原にはああ言ったけど、正直、四谷のことにはあんまり口出したくないんだよなぁ。
自意識過剰ではなく、原因の一端が自分にあると理解しているので。堪え切れず溜息を吐いたところで、目前に迫っていた寮の扉が内側から開いた。
「茅野さん」
「なんだ、今日も遅いな」
タイミングの良さに驚いた皓太と正反対のいつもどおりの調子で扉を閉めて、茅野が石段を下りて近づいてくる。
「はじめはしかたがないと思うが。オーバーワークまで成瀬を真似るなよ」
慣れたつもりになったころに無理が出るぞ、と笑われて、皓太も苦笑を返した。
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