1047 / 1072

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 2-1

[2]  ――なんで、俺、なんでもない顔のひとつくらい維持できないんだろ。  数日前の生徒会室での失態を思い出して、行人は深い深い溜息を吐き出した。  あの場に二年生の先輩たちがいなかったことは不幸中の幸いかもしれないが、高藤は呆れ切った顔をしていた気がするし、居合わせた荻原も生温かい表情を隠さなかった。  次々と連想されていく映像に、どんどんと視線が下を向いていく。今日も今日とて昼休みに生徒会室に向かおうとしているのだから、なおのことだ。  ついでに言っていいのであれば、あれほど呆れた顔をしていたくせに、決定的なことは最後まで口にされなかったことも、気を遣われていることが丸わかりで。だから、どうしたって居た堪れない。  ――なにが、べつに来たかったら、本当にぜんぜん来ていいんだけど、だよ。  寮の部屋で改めて告げられた台詞を内心で繰り返して、ぐっと眉間に力を入れる。うつむいていた顔を上げて、教室のあるフロアの廊下を曲がろうとした、その瞬間。自分を呼ぶ声が聞こえて、行人はびくりと立ち止まった。 「ごめん、榛名。ちょっと待って」 「……岡」  四谷も一緒にいるのではないかと構えていた行人は、振り返った先にその姿がなかったことにひとまずほっと息を吐いた。

ともだちにシェアしよう!