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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 2-9
「え……っと」
「前に、あまり気にしすぎないようにしたって言ってたけど。なかなか難しいでしょ」
にこりと成瀬がほほえむ。やんわりと誘導された会話の帰着に、やっぱり、とただ思った。気恥ずかしさを越えて、どこか安堵するような心地で。
やっぱり、知ってたんだ。
自分が、逃げるように生徒会に昼休みも行っていたことも、それもなんだか気まずくて、めったと来ない場所に避難してきたことも。
以前に相談した「友達」と結局うまくやることができていないことも。
――でも、そうだよな。
自分がこの人にうまく隠し通せるわけも、同じ立場に立つことができるようになるわけもない。そうわかるから、あまり意地を長く張ることもできなかった。
「……その」
「うん」
「相手が悪いわけじゃなくて、俺の問題なんですけど」
「うん」
それで、と話を促してくれる声は、過度に自分に肩入れをする雰囲気はなく、ただフラットに柔らかい。
無意識に机の上で組んだ指先に視線を落として、行人は続けた。精いっぱいなんでもない、世間話のような調子を保とうとしたことが、最後のプライドだったのだと思う。
「あんまり気にしすぎないようにしようと思って、それが相手のためでもあるんじゃないのかなって勝手に思って、どうにかふつうにしようと思って、それで、できてるって思ったんですけど」
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