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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 3-12
「だって、榛名ちゃん、公にしたくないんでしょ。そうなったら寮長の言うとおりで、寮生委員としてそれ以上が起きないように、行動を気をつけて見ておくくらいしかないよ」
そういう意味で、本当に注意事項としての引継ぎだったんだろうね、と続いた台詞に、皓太はそっと溜息を吐いた。榛名が申告をしたがらない理由はわかるから、そこに自分が口を出すつもりはない。茅野の見当の根拠も今聞いた話だけではわからないが、物証がないというだけで、それなり以上の確証は持っているのだろう。
そうでなければ、こんな話を後輩に聞かせないはずだ。だから、そうなのだろうと思う。でも、よくわからない。
「ベータ、か」
「なに? ハルちゃんの取り巻きのアルファだったら納得できた?」
「そういうわけじゃないけど」
いや、でも、そういうわけなのだろうか。自分で否定しておきながらも、やはりよくわからなくて、結局、どうにも曖昧な返答になってしまった。
強いて言うなら、やるせないという表現が一番適切だったのかもしれない。
――というか、まぁ、誰でもいいわけがないよな。
アルファだろうが、ベータだろうが、オメガだろうが。そう自分を納得させて、皓太は言い直した。
「ありがと。俺ももう一回ちゃんと聞いてみる」
まぁ、榛名が意見を撤回するとは思えないのだが。苦笑まじりに言い足すと、「俺も一応聞いたんだけど、自分のうっかりだからで流されたちゃったんだよね」という台詞が返ってきて、だろうなぁ、とまたひとつ笑ってしまった。
本当に、そういうところが、どうしようもなく頑固にできている。だからと言って、嫌いなわけでもないけれど。
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