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パーフェクト・ワールド・エンド4-6
「今までとは違うんだからさ」
「でも」
なんとはなしに覚えた違和感に、行人は声を上げた。
「ほら、高藤と成瀬さん、幼馴染みだし……って、知ってたっけ」
「知ってはいるけど。と言うか、会長に隠す気がないから、高藤がいくら秘密にしようと思ったところで、知ってる奴は知ってると思うけど。――いや、だから、そう言う話じゃなくて」
微かに苛立った風に、四谷が語気を強める。
「好きな相手に、比べられて喜ぶ人間なんていないに決まってるって、そう言ってんの。その比較対象が誰かなんて関係ないし、身近な人間と比べられる方が、精神的にきついと思うけど」
「それは分かるわ。俺も兄貴と比べられるのが一番、嫌だし」
「岡のお兄さんと言えば、三年生でしょ。聞いてみてよ」
「えー、俺の兄貴は、会長たちの華やかな世界とは無縁のところで生活してるんだよ。寮も葵だし。寮に戻ってから寮長に聞いた方がよっぽど詳しく知れると思うけどなぁ」
そのままどんどんと進んでいく会話を聞くともなしに聞きながら、そう言えば、と今更ながら行人は思った。
――今朝、あいつ、やたら成瀬さんの名前、出してたっけ。
それが、四谷の言う「好きな相手」から言われたから、と言う理由ではないだろうけれど。
成瀬さんじゃなくて、悪いけど、とか。そもそもで言えば、昨日も――。
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