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パーフェクト・ワールド・エンド4-8
「あのさ」
寮の自室の勉強机で、涼しい顔で問題集を解いていた高藤が、シャーペンを机上に置いた。その音に、行人は必要以上に驚いた反応で、隣に視線を向ける。
その態度に、高藤が何とも言えない溜息を押し出した。
「聞きたいことあるなら、聞いてくれたら良いよ。そんな殊勝な顔で遠慮しなくても」
「してねぇよ」
「いや、してる。してる。榛名に気を使われるなんて、本当に気持ち悪いから、勘弁してほしい」
本当に嫌そうに言われてしまって、行人は閉口した。同じ部屋で暮らすこと、四年目だ。本心で言っているのかどうかくらいはさすがに分かる。
――必要以上に迷惑かけないようにしておこうと思った挙句が、すぐに見透かされて呆れられるって、どうなんだ。
「なんだよ。クラスで何か言われた? いや、自分のことだったら、そんな顔しないか。どの噂が気になってるの。風紀? 生徒会? 寮生委員会? それとも成瀬さん? 向原さん?」
「……向原、先輩」
答えるまで続きそうだった問いかけに、行人は観念して一つを選んだ。
「生徒会、とも言えるかもしれないけど」
「その噂、榛名たちのクラスもまわってるんだ?」
「も、ってことは、おまえのクラスも?」
「……まぁ、正解を聞きたければ、今、ここの一番上の階まで足を運べば良いだけの気がしなくもないけど」
高藤の視線が天井を向く。行人も自然とその先を追って、溜息を吐いた。
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