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パーフェクト・ワールド・エンド4-11
「すごく厳しいんだよね、お家が。特に成瀬さんは長男だし、男兄弟も他にいないし。――俺の一級上に、成瀬さんの妹もいるんだけどね。彼女はベータだし。期待と言うのもあるんだろうけど、小さいころは、あの家の人が怖かったな、俺はすごく」
だから、成瀬さんがあれだけまともに育ったのが、俺としては奇跡に近いと思っていると言うか、と。
哀れんでいると言うよりかは、尊敬の色が滲んだ声で続けた高藤が、「そう言うお家」と言葉をしめた。
だから、行人は「そうか」と頷くしかなかった。
あの人は、ずっとそうやって生きてきたのだ。当たり前ではあるが、そこに行人が関与する権利はない。
もし、あるとしたら。認めたくはないけれど、あの人だけなのではないかと行人は思った。
成瀬さんの隣にいつもいるひと。絶対的な支配感を出す、アルファの上位種。
気に食わないけれど、あの人が、ずっと成瀬さんを支えて守り続けてきたのも、事実なのだろう。
誰にも知られないように。
誰にも壊されないように。
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