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パーフェクト・ワールド・エンド5-3

 と言っても、それが今の陵学園の現状だ。  失礼します、と言い置いて出ていった華奢な背を見送って、成瀬はぼやいた。 「おまえのところの寮って、朝から晩まであんな感じなの?」 「……溜息出るだろ」 「溜息と言うか、それ以前に同じ空間にいたくない」 「いたくなかろうが、同じ寮なんだから仕方ねぇだろうが。と言うかな、おまえ」  宥める調子とは正反対の呆れ声で篠原が続ける。 「今、派手に揉めそうになってるのは、おまえのところだろうが」 「……」 「先に断っとくと、俺は今、苛々してるし、細かい事情は知らない。それでも、な。おまえと向原が揉めるって言うなら、九割九分、おまえが悪い」  そこまできっぱり言い切られると、いっそ清々しい。実際、反論できるようなこともない。 「滅多なことじゃ、あいつは、――こんな面倒な真似しなかっただろ」  成瀬の目の前。デスクの上に置かれたままの生徒会の記章に、篠原の視線が動く。 「辞めるって言うなら、仕方がないけど。補欠選挙になるのは、ちょっと面倒くさいよな」 「……あのな」 「分かってる」  断ち切るように言い切る。

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