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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4-2

 中等部にいたころも、似たようなことを言われたことはある。そのときははっきりと言い返していたはずなのに、今は心が完全に縮こまってしまっているみたいだった。  顔を見ることもできないでいるうちに、四谷が教室を出ていく。いつもだったら、あとを追うはずの岡は、今日はその場を動かなかった。 「気にすることないよ」  躊躇いがちにかけられた慰めに、ぎこちなく頷く。そうすることしかできなかったからだ。促されるまま、自分の席に戻って腰をかけた行人は、小さく息を吐いた。  興味本位の視線を遮るようにすぐ近くに立ったまま、岡が続ける。 「って言っても気にしちゃうだろうけど。今のはどう考えても四谷が悪いと思う」 「でも……」 「榛名は歩み寄ろうとしただけだろ。その前になにがあったとしても、少なくとも教室で取る態度じゃないよ。あれは四谷がひどかった」  断言してもらっても、なにも安心することはできなかった。けれど、もう一度、「でも」と反論をすることは憚られて、曖昧に頷く。  ここで「そんなことはない」というと、ますます擁護してもらえそうで、それが怖かったのだ。  ……もう一回、ちゃんと話してみたかっただけなんだけどな。  もし、なにかあるのなら相談してもらいたかったし、そうではなく、やはり自分の言動が原因だったというのなら、自覚して謝りたかった。

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