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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4-3

 ただ、またひとりで突き進んで失敗したくなかったから、勇気を出して岡に相談はしたけれど、それだけだ。  いきなりふたりきりで話をするのが難しいなら、まずは教室で話しかけてみたら、というアドバイスに納得して、実行してみたというだけ。  でも、きっと、なにかが駄目だったのだ。  ――オメガってみんなそうなの? 水城みたい。  勝手に再生される頭の中の台詞に、机の下で何度も指先を握り直す。  自分が嫌がる言葉を、自分の心に刺さる言葉を選んだだけだったとしても、普段から心のどこかで思っていなければ、選択肢として浮かばないはずで、だから。だから――。  ……水城みたい、か。  春。はじめて会ったころから、あんなふうには絶対になりたくないと思っていた。同じオメガという性を持っていたからこそ、自分の性を利用して都合良く周囲をコントロールする水城に強い嫌悪感を抱いていた。 「ごめん。ありがとう」  どうにか表面を整えて、行人は岡に声をかけた。四谷は悪くないから、と続けようとした台詞を呑み込んで、大丈夫、とだけ告げる。  その言葉が同情を誘うものになるのかどうなのか、わからなくなったのだ。昼休みの終了を告げる鐘が鳴る。担当の教師が入ってくる時間になっても、四谷が戻ってくることはなかった。

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