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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 5-2
「あ……、そうなんだ」
「そんな意外そうな顔しなくても。まぁ、たしかに、ちょっとトラブルメーカーなところはあるなぁとは思ってたけど、高等部に入ってからだいぶ丸くなってたし、それに今回は」
と、言いかけたところで、岡は少しだけ周囲を気にするそぶりを見せた。誰も近くにいないことを確認して、続ける。
「榛名にも言ったんだけど、四谷が悪いよ。四谷もいろいろあると思うし、だからちょっとくらい苛々してても俺もなにも言うつもりはなかったけど」
あれはさすがに庇いきれない、とまで続いた台詞に、そうなんだ、と皓太は同じ相槌を繰り返した。
いくら数えきれない前科があるとは言え、榛名に問題があると思いすぎていたかもしれない。
「それに榛名が、なんというか、落ち込んでるというより、傷ついてるみたいな感じで」
「ええ……」
「ええって。だから、高藤もこうやって聞いてるんだろ?」
「いや」
「だって、基本、放ってるじゃん。もしかして、部屋で塞ぎ込んでる?」
「いや、そういうわけでも」
ないんだけど、という否定を皓太はなんとなく呑み込んだ。塞ぎ込んでいるというよりは、「なにかしらあった」を通り越して「よくわからないがんばるスイッチ」が入っている感じがあって、逆にそれが怖かったんだけど、とは説明しづらかったからだ。
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