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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 5-3

 おまけに、岡はやたらと心配そうな顔をしている。中等部にいたころからずっと四谷のグループにいた岡が。その雰囲気に押され、皓太は眉を下げた。  まぁ、なにかしらがあって一度かなりへこんだだろうことは嘘ではない。 「……うん、そうかな。ちょっと気になって」 「だよな。でも、まぁ、教室のほうは俺も気にしておくし、もう言わせないから。安心していいよ」 「言わせないって……。あぁ、もう、四谷と話してくれたんだ?」 「いや」  以前、あのふたりが揉めたときも間に入ってくれたのだったなと思ってほっとしかけていたのだが、岡はまたしてもはっきりと否定した。 「なにか言おうとしたら、間に入るってこと。話すのはもういいよ。選挙の前から、何度も話して、気も使って、それでこれなんだから。朝比奈もさすがに持て余してる」  四谷の、たぶん、一番親しい相手だ。岡の言っていることもわからなくはない。いくら、もともとは仲が良かったとは言え、機嫌の悪い人間にずっと気を遣っていれば、嫌気も差すだろうとわかるからだ。  供給ばかりの対人関係が、いつまでも続くわけがない。  ――でも、これ、俺が「そこまでしなくても」って言ったら、また「榛名がかわいそう」になるんだろうな。  こういう感情的なループは、理論的に宥めても逆効果になるだけだ。自分が四谷を擁護することで望んでいない方向に加速させかねない。今は余計なことは言わないほうがいいと判じて、そっか、と皓太は曖昧な相槌を返した。

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