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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 5-8
黙り込んだ皓太を気にしたふうでもなく、さらりと榛名が続ける。
「ちゃんとしたいんだよ、いろいろ。いまさらかもしれないけど、成瀬さんたちが卒業する前に」
その言葉に、なんだ、と皓太は得心した。もやりとしたのか、お門違いに苛立ったのか、それとも本当にすとんと腑に落ちたのかは自分でもよくわからない。
けれど、ほんの少し、変に醒めた感覚を覚えたことは事実だった。
卒業する前に気持ちに蹴りをつけたいと、そういうこと。
へえ、と気のない相槌を打って、隣の椅子を引く。パラパラと参考書を捲っていた皓太だったが、なんでもないふうを装ってもうひとつを問いかけた。
「ちゃんとって、四谷のこと? さっき、たまたま廊下で会ったんだけど、岡、心配してたみたいだったよ」
「それもそうなんだけど、もう一個ちゃんとしたいことがあるっていうか……、って、岡? なんて言ってた?」
もう一個、ちゃんとしたいこと。予想を決定づけられた気分で、苦笑を返す。
ようやくはっきりと目が合ったな、とも思いながら。
「榛名は悪くないって言ってたけど。そんなにきつくなんか言われたの?」
「べつに……」
そういうわけじゃないけど、と一変してごもごと呟くので、もうひとつ溜息を呑み込んだ。
自分に非がないというのなら、はっきりと言えばいいと思ったし、非があろうがなかろうが落ち込んだのであれば、そう言えばいいだろうと思っただけだ。
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