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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6-9
呆れたような溜息のあとに続いたそれに、行人は視線を落とした。
「……ごめん」
「謝んないでよ、八つ当たりに決まってるじゃん。なんなの、本当、もうやだ」
語尾の震えに気づき、はっとして再び顔を上げる。机に肘をついて手のひらに顔をうずめている四谷の表情はわからなかった。うつむいたまま、四谷がぐしゃりと前髪を乱す。
「自分がみっともない」
いったいなにがみっともないのかも、行人にはわからなかった。だから、打ち明けてくれることを期待して待つ。けれど、続いたのは予想もしていなかった台詞だった。
「俺、知ってたんだよ、榛名たちの部屋に勝手に入ったやつ」
「え……」
「半年以上前の話だけど、覚えてるよね。大変だったもんね」
大変。たしかに、大変ではあった。でも、忘れていたとは言わないけれど、行人にとってあの出来事はもう随分昔の話になっていた。だから。
「えっと、……でも、べつに、四谷がやったわけじゃないだろ?」
そこまで思いつめた顔で告白される意味がわからず、問い返す。その行人を見て、四谷は信じられないという顔をした。
「なんで?」
「なんでって言われても。誰が部屋に入ったのかは知らないけど、計画したのは水城だろうって知ってるし」
その事実を水木から匂わされたときは、うっかり掴みかかってしまったけれど。今となっては、できる限り関わらないようにしようと決めているというだけだ。
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