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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6-10

「あ、でも、茅野さんは寮の中で起こったことだからってけっこう気にしてくれたから、教えたほうがいいのかもしれないけど」 「ちょっと」 「まぁ、でも、俺はそこまでなにも思ってないし、きつめのお説教くらいで終わるんじゃないかな」 「いや、違うから」 「え?」 「なにが『え?』なの? 違うでしょ。そうじゃなくて」 「……そうじゃなくて?」   また、見当違いのことを言ってしまっただろうか。きゅっと眉根を寄せた四谷の顔を見つめ、行人は問い返した。しばらくの沈黙のあと、四谷はぽつりと呟いた。まるで懺悔をするみたいに。 「俺、知ってたのに、黙ってたんだよ。なにを盗ったのかも」 「えっと」  真剣な四谷の声音と反比例した自分のそれは、間の抜けたほどの困惑に満ちていた。 「でも、なに盗ったのかなんて、そのときは知らなかっただろ?」  仮に、四谷が誰かが自分たちの部屋に入るのを見ていたとして。あるいは、入った誰かから打ち明けられたのだとして。後者だった場合、時期がいつかはわからないけれど、少なくとも前者だった場合、四谷はなにかなんて知らなかったはずだ。自分の秘密を知らなかった以上、そうであったはずだ。  後者だったとしても、四谷が悪意をもって黙っていたとは思えなかった。すべてが終わった後に思い当たってしまったか、すべてが終わる前で深刻に捉えなかったか。その程度のことだろうと思う。

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