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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6-13

「そういう意味で、身内にあまいっていうのは、お返しみたいなものかもしれない。今、思っただけだけど」 「そっか」  なんか、本当に馬鹿みたいだな、と四谷が小さく小さく呟く。なにひとつ馬鹿みたいだとは思わなかったけれど、いつか、本心で「馬鹿みたいだったな」と呆れたように笑ってくれるようになったらいいと思った。  ふたり揃って教室に戻るのもいいかもしれないけど、もう明日でいいんじゃないか、なんて。勝手に決めて寮に帰ることにした。明日は必ず授業に出ると約束をした四谷に、保険医は苦笑ひとつで許可証をくれた。おこぼれ的に行人ももらってしまったので、今日のこれはさぼりではなく病欠になるようである。  寮に戻る道すがら、よかった、と胸を撫で下ろした行人に、四谷は首を傾げた。 「なに? 榛名の家って、そんなに厳しいの? ああ、でも、そういや、榛名、昔からわりと授業は真面目に出たよね」  まだ少しぎこちなくはあるものの、世間話という調子だった。 「いや、家はべつに。……まぁ、ちょっと心配性なところがあるから、あんまり伝わってほしくはないんだけど。でも、そうじゃなくて、ほら、その、茅野さん」  サボると声かけてくれるって知らなかったから、とぽそぽそと打ち明ける。以前に一度サボったときは、図書室で言っていたとおり、成瀬が言葉添えをしてくれていたのか、怒られたわけではなかったのだけれど。それが逆に少し居た堪れなかったというか、なんというか。

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