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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6-14
「ああ」
心底同意するという顔で四谷が頷く。
「俺も最近よく言われる。あまりしつこく追及もされないんだけどさ。たしか、それが逆に、なんていうか……打ち明けるタイミングを残してくれてる感じがあって、きつかったんだよね。まぁ、ありがたいとは思うけど」
「うん」
「見放さないって言われてるみたいでさ」
「うん」
そういう人だよな、と行人は小さく笑った。自分がオメガだとわかっても、公平なままでいてくれる人。
――まぁ、それは、ある意味で四谷もそうだったんだけど。
そうやって、自分を自分として見てくれる人間が何人もいるのだとわかったから、行人はうつむかずにすんだのだ。
「寮長だけじゃないけどね。榛名もだけど、本当、荻原もしつこかったし。成瀬先輩にまで声かけられちゃったし。あの人、普段、そこまでお節介で感じでもないのにね。嫌になるなぁ」
櫻寮でよかったって、気兼ねなくここで卒業したいって思っちゃうじゃん、と自嘲するように言うので、行人は思わず横顔を凝視した。軽口にできなかった真面目な声が飛び出す。
「卒業しろよ」
「するに決まってるでしょ。なんでせっかく苦労して入ったところをやめないといけないの」
「いや、だって……」
「だから、そのためにもちゃんと言おうって思っただけ」
それだけ、と言い切った顔は少しすっきりしているように見えて、そっか、と行人は頷いた。
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