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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7-1

[7]   情緒不安定と評すると、さすがにあれな気はするものの、共同生活も四年目となる同室者は、自分の感情をきっちりコントロールすることに、たぶん、あまり向いていない。  まぁ、本人は、最低限コントロールしているつもりでいるのだろうし、不機嫌や不安をまき散らしているつもりは一切ないのだろうけれど。わかってしまうので、なんというか意味を成していないのだ。  皓太自身、ちょっとばかり感情的な人間が苦手で、「感情的な自分とか無理、恥ずかしい」との自負で律しているところがあるものだから、余計に目についているという可能性はあるのだが。  そういったこちら側の事情をさておいても、顔のわりに気が短く、「言わなくてもいいだろ、それ」みたいなことをぱっと口にしては、あとでひっそりと落ち込むというような。とどのつまり、対人関係に難のあるタイプでもあるのだった。  高等部に入ってからは改善スピードが劇的に上がったと認めるし、頼りになると言ったことも、リップサービスばかりでなく本心だ。だが、自分は、結局、カバーしてやらないといけない相手と思っていたかったのかもしれない。  ――でも、俺がなにかしてやらなきゃな、なんて上から思ってたつもりはなかったんだけどな。  つもり、つもり、と言っている時点で、本当につもりでしかなかったのだろうけれど。こう、なんというか、四谷の件に関しては解決して「よかったな」という素直な感想もあるものの、「自分でなんとかするんだな」という不満なのかよくわからない感情が渦巻いているのだった。

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