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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7-6
「もうそろそろ一年、か」
自分たちが高等部に上がって、そうして。次の春には新しい新入生が入ってきて、あの人たちはいなくなる。その日は確実に迫っていた。
――あたりまえのことだけどな。
時間は流れる。人が変われば、状況は変わる。変わらないものはないし、終わらないものはない。それだけのことで、その流れの一部に与することを選んだのは自分だ。
「今日も遅くまで残ってたんだな」
おつかれさま、という声に、はっとして振り返る。見慣れた柔らかい笑顔に、こういった間の良さも才能の一種なのだろうなぁと思いながら、皓太は呼びかけた。ちょうど頭に浮かんでいたり、あるいは単純に、ものすごく的確な場面で姿を現すことが、それは、もう、昔からよくあるのだ。今出てきてくれなくてもいいのになぁと思うタイミングで現れることもあるのだけれど。
「成瀬さんこそ。勉強するにしても、寮の部屋でしたらいいのに」
自分たちと違いひとり部屋なのだから、煩わされることはないだろうに、との疑問を正確に感じ取ったらしい。なんでもない調子で成瀬が笑う。
「寮ですることも多いけどね、気分転換」
「気分転換かぁ」
「そう。たまには。皓太もちゃんとできてる? 気分転換」
「……そういう相談からは、完全に一線引いたんだと思ってた」
生徒会に近づかないことが彼なりの気遣いと信用とわかっていたので、なにも文句はないつもりだったのに。この数日の――主に同室者のことに対する悶々のせいか、妙に拗ねた声になってしまった。
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