1122 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7-7

「生徒会については余計な口を出すのはやめておこうと思ってたけど。それだけ」  そこまでぜんぶ放り出さないよ、と笑う横顔は本当にいつもどおりで。ほっと力が抜けるやら、情けないやらで、皓太はもごもごと弁明を試みた。 「べつに、ぜんぶ放り出されたとは思ってないけど。生徒会のこともちゃんとわかってるし」 「うん」 「ただ、ちょっと、ひさしぶりだなと思っただけで」  同じ寮にいるのだから、まったく顔を見ないわけではない。けれど、ふたりで喋ることは随分とひさしぶりだった。  たしかにそうかもな、という穏やかな相槌に、うん、と頷いて、いつごろまでだっただろうな、と皓太は考えていた。  学校でのことや、自分自身のこと。そういった悩みを素直にこの人に相談していたのは。  ――この二、三年はしてなかったかもしれないな。  昔の自分は、この人に相談したら、すべてが解決するとそう信じていた。 「さっき、生徒会室で荻原と話してたんだけど」 「ああ、荻原、手伝ってくれてるんだっけ。寮生委員のほうも忙しいだろうに」 「うん、それはすごいありがたいと思ってるんだけど、その、……あんまり、人からの好意にしっかり向き合ってないみたいに言われて」 「ああ」  先ほどと同じ至極あっさりとした反応に、成瀬さんもだって言われてたけどね、との台詞を返す代わりに、皓太は問いかけた。 「成瀬さんは、告白されたとき、しっかり考えて相手に応えてるの?」  言葉にした直後。小学生みたいな物言いをしてしまったと気恥ずかしくなる。けれど、成瀬は笑うことも、揶揄うそぶりも見せなかった。幼いころ、サンタクロースは本当はいないのか、と尋ねたときと似たゆっくりとした調子で、そうだな、と呟く。  あのときの自分は、彼が「いる」と言うのなら、信じると決めていたのだと思う。さすがに、今は、発言すべてを鵜呑みにするつもりはないけれど。

ともだちにシェアしよう!