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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7-10

「それって……」 「ん?」  こちらを向いた成瀬の顔は、聞きたいことがあればなんでもどうぞと書いてある。だが、しかし。藪蛇を悟って、皓太は首を横に振った。 「ごめん、なんでもない」 「そう? ならいいけど」 「うん。大丈夫」  頑なな主張に小さく笑い、でも、と成瀬が付け足す。 「相手に受け入れてもらいたいからする告白だけじゃなくて、自分の思いに区切りをつけるためにする告白もあるんだと思うよ」 「……それはそうだと思うけど」 「だったら、その子が一歩進むために自分が背中を押すって考えたらいいんじゃないかな。俺に聞くくらい悩む相手なんだったら、変に考え込まなくても、皓太はちゃんと大切にできるよ」  大丈夫、と柔らかく太鼓判を押され、うん、と頷く。もう間もなく寮に着くというタイミングで、過たず会話は完結した。本当に、うまいんだよな、そういうとこ。曖昧に口元を緩め、改めて考える。  荻原に言われ、実際に告白されたらと場面を想像し、どうしようかな、と悩んだことは本当だ。この一年、四谷に迷惑をかけたとも思っているし、世話になったとも思っている。でも――。  ――だからちゃんと考えないといけないって思ったのも嘘じゃないけど、それ以上に、まずい対応して、榛名に嫌がられたくなかったんだよな。  榛名があれだけ必死になっていた、「友達」だから。自分の本心がこれだと知っても、この人は大丈夫とほほえんでくれたのだろうか。

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